あーやだやだ 面倒くせ〜
なんで海なんて まったく毎度毎度やらかしてくれるよ コイツは
水着の美女 美女 美女
以前の俺なら海はパラダイスそのもの 夏といえば海!だった
その名残か香のハンマー無しの条件に 体が条件反射的に動いた
海行きを張り切って承諾しちまった
(どうすんだよ〜。絶対ナンパどころじゃねーぞ。)
助手席に座るこいつがビーチに出たらどうなるか 想像に難くない
海が見えてきた うきうき顔の香
(かなわねーな。こんな顔されたんじゃ)
無意識に鼻歌が漏れる
「なによ、なんだかんだ言って楽しんでるんじゃない。」
「まぁ、折角来たんだしな。Vacationするか!」
そう言って俺はアクセルを踏み込んだ
「香、お前ビーチには出るな。ホテルで遊んでろ。」
香の驚きと怒りに満ちた表情に少々怯んだ おお怖ぇ・・・
「なんでせっかく海に来たのに、あたしがビーチに出ちゃいけないのよ!!」
「お前みたいな男女がビキニ着てビーチに居たら公害なの!」
「なによそれ!!ただ単にあんたのナンパの邪魔だって言いたいだけでしょ!!」
「ピンポ〜ン。おおっと香ちゃん今日はハンマーなしだよね。」
「ぐぐぐ・・。わ、わかったわよ。離れていれば良いんでしょ!お好きにどうぞ!!」
「おい香、あとこれ着けてろよ。」
「何これ?」
「パレオ。お前なぁ、日に焼けたら赤くなるタイプだろうが。少しは頭使えよ。」
「あ、ありがとう・・・。」
(ほんと単純なヤツ お前がビキニなんぞ着てビーチに出たら
俺の心臓が持たないだろうが。ったく 少しは俺にも休暇をくれ!!)
「お嬢さ〜んっ、僕と・・グフッ・・・。」
−撃沈
別にどうだって良かった ゲームみたなもんだった
(あーあ、あいつ海に出る気だよ パレオまで外して こっちの身にもなれってんだ
つーか、気づけよ!・・・何やってんだ俺・・・)
(やべ〜!!!)
ゲームのつもりで始めたナンパに夢中になり香を見失った
岩場の方に走っていくと その影に消えていく少年に手をひかれた香がいた
(誰だ?あいつ)
香が気になってその場を離れられずにいた
「ちくしょう、焼けてきたぜ。」
小一時間待っていた 情けなくなってきた
「ちょっと僚、何小さくなってるのよ。部屋に帰るわよ。」
(か、香!!)
夏の陽をバックにした香 眩しさに目を細めた
「ああ。」
「ほんとこの夏空に似つかわしくない程辛気臭いわねー。」
本心を隠そうとした結果 表情がいつも以上に暗くなった
部屋迄の帰り道
羨望のまなざし ちょっといい気分だ
しかし当の本人は全く気づいていない 本当に鈍感なヤツ
「お前本当に鈍感だな。いつか死ぬぞ。」
「何よ!急に!あんたがナンパに失敗したのはあたしのせいじゃないからね!!」
焦点のずれたその言葉に 次の言葉が全くでなかった
部屋に戻りたらふく飯を食うと眠くなった
そりゃそうだろう 仕事以上に神経使ったぞ・・・多分
「僚、風邪引くわよ。ベッドに・・・。」
(こいつ こいつのせいで俺は休暇が休暇でなくなったんだ
食ってやる!!)
香の背中に勢い良く手を回すとその体を引き寄せた
「ちょ、ちょっと!いっ痛い!!」
「あ、悪ィ。大丈夫か?」
(くそ〜日焼けに阻まれた!)
こんなに夏が嫌いになったのは初めてだ
ふてくされて寝た
「もう、ちゃんとベッドで寝なさいよ!あたしシャワー浴びてくるから。」
香、それって“準備”ってことか?と一瞬思ったがコイツに限ってありえない
いつの間にか本当に眠っていた
「焼けたね、僚・・・。」
目が覚めた
香が俺に布団をかけ そっと出て行った
胸騒ぎがする
俺はそっと後を追った
香は昼間の少年と会っていた
「ふーん、俺に内緒でねぇ〜。」
面白くない
香と少年は連れ立って岩場に消えていった
鼓動が早まる
(ふざけるな!)
暫くすると岩場から二人が出てきた
(・・・早いな)
手を繋いでいる
(ぶっとばす!!)
「香。」
「・・・リョウ。」
“僚。”じゃねーよ
ま、駆け寄ってきただけヨシとするか
「誰だ?あの子。」
「ここで知り合った地元の子よ。凄くきれいな洞窟に連れて行ってくれたの。」
「ふ〜ん。」
少年を一瞥すると 鬣(たてがみ)の生えかけたライオンのような瞳をしていた
(いっちょ前に、オスじゃん。で、気づかずこいつは親切な少年とでも思っていたわけだ。)
マーキング
(いっちょまえに俺の縄張り荒らしてんじゃねーよ!
おっ さすが男の子 勘がいいねぇ)
衝撃
「青少年の前でなんてことすんのよ!!」
「香ちゃんハンマーなしじゃ・・・。」
「時間切れ。もう12時まわってんのよ!」
色々な痛みに耐えた
おかげさまで目が覚めちゃったんだよな〜
香ちゃん?